相続人以外へ財産を渡す「遺贈」を考えるときの基礎知識(熊本・熊本市の相続準備)

皆さまこんにちは。熊本市のマレー行政書士事務所です。日本公証人連合会が公表したデータによると、2023(令和5)年に作成された公正証書遺言は全国で11万8,981件とされ、この10年ほどは毎年おおむね11万件前後で推移しています。少子高齢化や多死社会の進行に伴い、生前のうちに相続や遺言を準備する動きが全国的に広がっています。熊本でも、相続人以外の人や団体に財産を残したいというご相談が見られるようになりました。今回は、そのような「遺贈」を検討する際の基本ポイントを整理します。

相続人以外への遺贈を考えるときの基本方針

相続人以外に財産を渡したいと考えるときに重要なのは、「誰に」「どの財産を」「どのくらい」残したいかをできるだけ具体化することです。ご自身は熊本・熊本市在住でも、お子さんが県外在住というケースでは、相続人同士の連絡や意思確認に時間がかかりがちです。生前のうちに遺言で意思を明確にし、相続人以外への遺贈も含めて方向性を示しておくことで、相続の場面での戸惑いやトラブルを減らせます。

相続人以外への遺贈は、家族の受け止め方に差が出やすい部分でもあります。「なぜその人(団体)に渡したいのか」という理由を、簡単なメモや付言などの形で残しておくと、受遺者だけでなく相続人にとっても納得しやすくなります。遺言の内容だけでなく、説明の仕方まで含めて準備しておくことが大切です。

遺贈の基本的な仕組みと受遺者になれる人

遺贈とは何か

遺贈とは、遺言によって財産を承継させることを指し、相続人以外の人や団体も受け取ることができます。配偶者や子などの法定相続人が法律上当然に取得する「相続」と異なり、遺贈は遺言者の意思に基づいて財産を渡す方法です。遺言がなければ、原則として法定相続分にもとづいて相続が行われるため、友人やお世話になった方、地域団体などに財産を残したい場合には、遺言を作成しておくことが欠かせません。

個人だけでなく団体も受遺者になれる

受遺者になれるのは、特定の個人だけではありません。公益法人やNPO法人、学校法人、社会福祉法人、地方公共団体などの団体も、遺言によって財産を受け取ることができます。熊本市内外でも、医療・福祉・教育・文化などの分野で活動する団体が多数あり、「生前にお世話になった施設を支援したい」「郷里である熊本のために役立ててほしい」といったご希望から、団体への遺贈を検討される方もいます。

ただし、どの団体に、どのような財産を遺贈できるか、受け入れ方法や事務手続の流れは団体ごとに異なります。実際に遺贈を行う前に、候補となる団体の窓口に連絡し、遺贈の受け入れ体制や方針を確認しておくと安心です。

相続人以外への遺贈で注意したいポイント

遺留分に配慮した全体設計

配偶者や子など一定の相続人には、法律上「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が認められています。遺贈の内容によっては、遺留分を侵害するかどうかが問題になることがあります。そのため、相続人以外への遺贈を厚くしたい場合でも、相続人の生活状況や家族関係を踏まえ、全体のバランスを意識しておくことが重要です。

財産の種類と管理のしやすさ

遺贈の対象となる財産には、不動産、預貯金、有価証券、動産などさまざまなものがあります。不動産を遺贈する場合には、その後の管理や維持費、処分のしやすさが問題になることもあります。一方で、預貯金や一定額の金銭を遺贈する方法であれば、受遺者や相続人にとって実務負担が比較的軽くなる場合もあります。どの財産をどのように渡すか検討する際には、将来の管理や換金のしやすさという観点も合わせて考えておくとよいでしょう。

受遺者・相続人への伝え方と熊本での準備のポイント

相続人以外への遺贈は、内容を知らされた相続人が驚くことも少なくありません。可能であれば、生前のうちに相続人へ大まかな方針を伝え、「このような理由で遺贈を考えている」という思いを共有しておくことが望ましい場面もあります。特に、相続人が熊本県外に住んでいる場合には、相続開始後に改めて遺贈の趣旨を説明するのは負担が大きくなりがちです。生前の説明やメモがあれば、遠方の相続人とも認識をそろえやすくなります。

熊本市で遺言や相続の準備を進める際には、戸籍や住民票の取得、公証役場での手続など、複数の窓口と関わる場面があります。法的に必須ではありませんが、生前のうちに「主な財産の所在」や「利用している金融機関」などをご本人が簡単に整理しておくと、相続開始後のご家族や遺言執行者が状況を把握しやすくなる場合があります。

行政書士に相談できること

行政書士は、相続や遺言に関する書類作成や内容整理のサポートを行うことができます。例えば、相続人や受遺者の関係を整理するためのメモの作成補助、財産の種類や所在を洗い出すための聞き取り、遺言に盛り込みたい事項の洗い出しなどです。また、相続人以外への遺贈を検討している場合には、「どの財産をどのような割合で渡したいのか」といったご希望を伺い、文章としてわかりやすく整理するお手伝いも可能です。

一方で、税務の判断や登記申請の代理などは、税理士・司法書士など他士業の独占業務に当たるため、行政書士が行うことはできません。そのような分野が関係する場合には、適切な専門職への相談が必要になります。熊本・熊本市で相続や遺言の準備を検討されている方は、まずは身近な相談窓口として行政書士を活用しつつ、必要に応じて他士業とも連携して進めていくと安心です。
最後までお読みいただきありがとうございました。