皆さまこんにちは。マレー行政書士事務所です。
令和4年1月に住民基本台帳法等の改正が施行され、住民票の除票および戸籍の附票(ふひょう)の保存期間が原則5年から150年に延長されました。これにより、相続手続に必要な証明書類の取得がしやすくなりました。当事務所では戸籍等の収集をご本人にお任せすることもありますが、その際よく耳にするのが「除票とか附票とか正直よくわからない」という声です。熊本の相続手続の現場でも、書類の名称や取得先を間違えてしまうことによる手続の遅れがたびたび見受けられます。今回は、住民票と戸籍の附票の違い、そして相続における実務上のポイントについてご説明します。
住民票とは何か
住民票は、各人の住所や世帯構成などが記載された書類で、市区町村が管理しています。市民としてどこに居住し、いつからそこに住んでいるのかという基本的な情報が記録されており、本人確認や行政サービスの提供に用いられます。
転出や死亡などによって住民登録が除かれると「住民票の除票」となり、これには除かれた日付や住所が引き続き記載されます。相続手続では、被相続人の死亡時の住所を証明する資料として用いられる場面があります。
戸籍の附票とは何か
戸籍の附票は、本籍地の市区町村が管理するもので、戸籍に記載されている一人ひとりの住所の履歴を記録した書類です。いつどこに住んでいたかという過去の住所の変遷が時系列で記載されており、不動産登記などで「最終住所」と「登記簿上の住所」の一致を確認する際などに使用されます。
記録自体は個人単位ですが、同じ戸籍に記載されている家族全員分をまとめて一通に出力してもらえる場合もあります。自治体によって書式や交付方法が異なるため、請求の際はあらかじめ確認しておくと安心です。
住所の記録対象となる期間
住民票は住民登録されている間の情報を記録します。一方で戸籍の附票は、現在の戸籍に入った時点からの住所の履歴を記録します。つまり、過去に別の戸籍に在籍していた期間の住所は、その当時の戸籍の附票にしか記載されません。
たとえば、婚姻や転籍によって戸籍が移された場合、それ以降の住所履歴は新しい戸籍の附票に記載され、古い戸籍分の住所はそちらの附票に残されたままとなります。
そのため、被相続人の住所遍歴をすべて確認したい場合には、必要に応じて過去の本籍地ごとに附票を請求する必要があります。
実務で混同が起きやすい理由
住民票と戸籍の附票はよく似ているため、書類選定の際に混同されることが多く、実務上も再取得となるケースがあります。熊本の相続手続でも注意が必要です。
- 現住所地の役所に戸籍の附票を請求してしまい、誤った書類が交付された
- 最終住所は住民票の除票で確認できたが、過去の住所履歴が求められたため、戸籍の附票の提出が必要になった
- 戸籍の附票は全ての住所が載っていると勘違いして、必要な履歴が漏れていた
金融機関や法務局での取扱いについて
提出先によっては、どちらの書類を提出すべきか明確に指定されている場合もあります。
たとえば、金融機関では被相続人の最終住所の確認資料として「住民票の除票」が求められることが多い一方で、法務局では相続登記に際し、「戸籍の附票」による住所履歴の証明を求められることがあります。
ただし、実際には金融機関ごとに取り扱いが異なることも多く、役所においてもどちらか一方で足りるケースもあるため、必要な場合はあらかじめ提出先に確認しておくことが望ましいでしょう。
行政書士が支援できること
行政書士は、職務上請求書を用いて戸籍・住民票・附票などの公的書類を代理で取得することができます。また、収集した情報をもとに相続関係説明図を作成し、手続に必要な資料を整理・準備することが可能です。
熊本市の相続では、被相続人と相続人が離れて暮らしていたり、相続人が高齢だったりするケースが多く、こうした書類取得や整理に対する支援のニーズが高まっています。
書類の選別を丁寧に
住民票と戸籍の附票は、いずれも相続手続で使用される大切な書類ですが、取得する際の窓口や記載内容、そして記録される期間に違いがあります。それぞれの特徴を理解し、目的に応じた正しい書類を選ぶことが、円滑な相続手続につながります。どちらの書類を取得すべきか判断に迷われる場合は、早めに行政書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。