皆さまこんにちは。マレー行政書士事務所です。
法務省が公表した登記統計(令和5年)によれば、全国の土地に関する登記事件数は年間約725万件にのぼり、そのうち約143万件が相続や贈与などによる所有権の承継による登記とされています。
相続においては、不動産の正確な把握が初動として極めて重要ですが、複数の自治体にまたがって所有しているケースも珍しくなく、「どこにどの不動産があるのか分からない」というご相談を熊本でも多くいただきます。
こうした場合に役立つのが「名寄帳」と呼ばれる資料です。本記事では、熊本の相続実務を想定しつつ、名寄帳の基礎知識と取得方法、活用上の注意点について解説します。
名寄帳とは何か
名寄帳とは、市区町村の税務課が管理する帳簿で、ある一人の名義人が同一自治体内で所有する固定資産(土地・建物・償却資産)を一覧にしたものです。登記簿とは異なり、実際の使用状況や未登記の建物などが記載されていることもあります。
相続では、登記簿だけでは把握できない財産が見つかることがあり、名寄帳の取得は相続財産調査の補助資料として非常に有用です。
名寄帳の取得方法
名寄帳は、不動産の所在する市区町村ごとに申請して取得します。相続手続のために取得する場合には、相続人であることや、被相続人との関係が分かる戸籍などの書類を添付することで、相続人が代理取得することも可能です。
熊本市の場合、窓口での申請に加え、郵送申請にも対応しています。申請書、相続関係を証明する戸籍謄本、本人確認書類、手数料を同封し、必要に応じて返信用封筒も用意することで取得可能です。
名寄帳で確認できる内容
名寄帳には以下のような情報が記載されます。
- 名義人の氏名
- 所在地・地番・家屋番号
- 地目・地積・建物構造
- 課税標準額・評価額 など
これらの情報から、被相続人がどの自治体にどのような不動産を持っていたかを一目で把握できます。相続人自身が認識していなかった不動産が見つかることも少なくありません。
名寄帳を使う際の注意点
名寄帳は、ある一人の名義人が同一自治体内で所有する固定資産の一覧表であるため、被相続人が複数の市町村に不動産を所有していた場合には、それぞれの自治体に対して個別に申請を行う必要があります。
そのため、不動産が1か所の自治体にまとまっている場合と比べて、申請書の作成や必要書類の準備、手数料の負担など、相続人の事務的な負担は増えることになります。
また、名寄帳の内容と登記簿の内容が必ずしも一致していないこともあるため、両方を突き合わせて確認することが重要です。特に古い登記や未登記の家屋などは、名寄帳で初めて存在が分かるケースもあります。
相続手続における名寄帳の活用
相続の実務においても、名寄帳は財産調査の起点として活用されることが多くあります。とくに、郊外部に農地や空き家を所有している方が多い熊本では、名寄帳(熊本市の場合「資産証明書」)がなければ気づけない資産の把握に繋がることがあります。
行政書士としては、名寄帳取得のための申請書作成支援、戸籍等の収集、財産目録の整理などの業務に携わることができます。正確な財産把握は、相続トラブルの予防にもなり、遺産分割協議書作成の前提となる作業です。
名寄帳で見落としのない財産調査を
相続では、被相続人がどんな不動産をどこに所有していたかの把握が第一歩です。名寄帳を利用することで、登記簿だけでは見落とされがちな情報も含めて、正確な資産の全容を知ることができます。
熊本の相続の現場においても、名寄帳の活用は極めて実務的かつ現実的な手段です。早めの取得と確認を行い、スムーズな手続につなげていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
