少額でも相続は相続

皆さまこんにちは。マレー行政書士事務所です。「財産がほとんどないから相続の準備はいらない」と考えている方は少なくありません。しかし、実際にはわずかな預金や家財しかなくても、相続手続は必要になることがあります。相続人が複数いる場合は話し合いが必要になり、手続が複雑化することも。今回は、財産が多くない人にこそ知っておいてほしい相続と遺言のポイントについて、行政書士の立場から解説します。

財産が少ないと相続手続は不要?

「大した財産もないから、相続の手続は必要ない」と思われがちですが、実はそうではありません。たとえ預金が数万円でも、金融機関では正式な相続手続を求められることがあります。金額が少ないからといって例外扱いになるわけではなく、相続人全員の同意や関係書類の提出を求められるのが通常です。

また、年金の未支給分、公共料金や税金の還付、あるいは葬祭費の請求手続など、故人の死後に発生する処理はすべて相続の一部と考えるべきです。こうした手続を正しく行わないと、少額とはいえ本来受け取れるはずの権利を失う可能性もあります。さらに、生命保険の死亡保険金や、亡くなった方が保証人になっていた契約の解除、未払い家賃やクレジット支払いの精算なども関係してくる場合があり、思った以上に相続が絡む場面は多く存在します。

相続人が複数いれば調整が不可欠

たとえ相続財産が少なくても、相続人が複数いる場合は原則として全員の合意が必要です。預金が1万円しかなくても、兄弟や親族が複数いる場合はそれぞれに連絡を取り、同意を得て書類に記名・押印してもらう必要があります。

さらに、相続人の一人が先に亡くなっていれば代襲相続が発生し、その子や孫が相続人になるケースもあり、関係者の数は一気に増えることもあります。少額相続であっても「誰に何を承継させるか」がはっきりしないと、手続は進みません。協議が難航した場合には時間も手間もかかり、トラブルに発展することすらあります。

遺言書があれば簡略化できる

こうした煩雑さを防ぐ手段として、有効なのが遺言書の活用です。遺言書があれば、相続人全員の同意を得る必要がなく、手続が大幅に簡素化されます。特に公正証書遺言であれば、金融機関や法務局などでもそのまま使えるため実務上も安心です。

たとえば「預金残高のすべてを長女に相続させる」という遺言があれば、他の相続人の署名を求められずに済むため、時間や労力を大幅に削減できます。これは相続人が疎遠だったり、高齢・障害を抱えていたりする場合に非常に効果的です。相続人の一部が遠方に住んでいるケースでも、遺言があることで書類の取り寄せや調整が不要になり、全体の手続を迅速に進めることが可能です。

さらに、遺言書には「付言事項」として、財産分けの理由や家族への想いを残すこともできます。法的効力はないものの、相続人同士の感情的な対立を未然に防ぐ効果があり、円満な相続のために役立ちます。

行政書士が支援できること

行政書士は、相続の手続に必要な書類作成を中心に、さまざまな支援を行うことができます。具体的には、相続人や財産の調査(戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書などの収集)、法定相続情報一覧図の作成、公正証書遺言の文案作成支援などが含まれます。

また、預金や不動産の名義変更のための事前準備、関係書類の整備、必要に応じて提携する司法書士や税理士との連携による総合的な支援も可能です。相続実務では、官公署や金融機関とのやりとりが必要となる場面が多く、地域の制度を熟知した専門家の関与が非常に有効です。さらに、相続人の中に外国在住者がいる場合や、特別受益・寄与分など複雑な要素が含まれるときにも、行政書士の助言や資料整備が役立ちます。

最近では、インターネット上のデジタル遺産やパスワードの整理といった新しい相続課題への対応も求められており、行政書士に期待される役割はますます広がっています。

まとめ:小さな相続にも確かな備えを

相続というと大きな財産を持つ人の話のように思われがちですが、実際には少額の相続にも多くの手続や配慮が必要です。遺族の負担を軽くし、手続を円滑に進めるためには、あらかじめの備えが何より大切です。

行政書士は、そうした「備え」のサポートを通じて、家族の安心と円満な相続の実現に貢献します。財産の多少にかかわらず、相続を「自分には関係ない」と考えず、まずは一度専門家に相談してみることが、トラブル回避の第一歩となります。もし相続について気になる点があれば、早めに専門家へご相談されることをおすすめします。最後までお読みいただきありがとうございました。

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